事業案内
BCPは「Business Continuity Plan=事業継続計画」の略です。
厚生労働省医政局「BCPの考え方に基づいた病院災害対応計画作成の手引き」(平成25年3月)には、このように記載されています。「震災などの緊急時に低下する業務遂行能力を補う非常時優先業務を開始するための計画で、遂行のための指揮命令系統を確立し、業務遂行に必要な人材・資源、その配分を準備・計画し、タイムラインに乗せて確実に遂行するためのもの」
簡単に言うと、BCPとは「ゴール・目標を目指しどのようなルートで到達するかを考える戦略」のことです。医療施設の立場から考えると、「発災等の緊急事態に対応できるように体制・計画を整えておくこと」となります。
緊急事態においてどの業務を優先するか、最低限の業務を行うために必要なものは何か、といったことを事前に検討しなければなりません。
災害対策マニュアルは初動対応が中心で、人命救助・資産の保全を目途とした現場主体であるのに対し、BCPは発災時の業務継続を念頭においた管理運営者が主体となります。
医療施設のBCPの目的
① 職員を守る
② 施設の安全を守る
③ 医療の継続を図る
④ 医療の復旧を遂げる
では、医療施設におけるBCPとはどんなものでしょうか?
通常のBCPと同じであれば、発災時に平時と同程度の医療提供能力を維持することや早期回復を目指すことになります。
しかし、発災時の医療需要には、通常業務に加え、下記の医療需要の増大が見込まれます。
① 発災後生じる医療需要
② 新たに発生する業務(救急対応など)
医療施設の場合、災害によって怪我を負う方々が多く発生することが予想され、平時よりも業務量は何倍にも膨れ上がる可能性があります。そのため、平時の医療需要以上の医療提供能力を求められる場面でも対応できる体制を検討しなくてはなりません。
増大する医療需要にいかに対応するかは、特に医師の判断に負うところが大きく、BCP策定には決定権のある幹部職医師の存在が必要不可欠となります。
また、発災時には建物倒壊やインフラ崩壊、身内のけがといった理由で、従業員が出社できないことが想定されます。そのような状態において、目標復旧時間内に重要な機能を再開させ、業務中断に伴うリスクを最低限にし、一人でも多くの患者を救うためにはBCPの策定は重要となります。
今後、BCP策定は「災害拠点病院(義務化)→期間病院→一般病院→クリニック→薬局」と順次義務化になることが予想されています。さらに、病院やクリニックだけでなく、それらのBCPを参考に地域全体のBCPを策定していくことが求められています。(京都市、富山市の取組み)
BCPを策定することは、職員の命、患者の命、ひいては地域全体の命を守ることに繋がります。
また、災害は地震だけではありません。特に医療機関ではパンデミック対策が不可欠になるでしょう。
パンデミックの場合は被害のピークが数週間から2か月ないしそれ以上続くことが予想されます。さらに第2波、3波と繰り返し生じる可能性もあります。
医療機関におけるパンデミックBCPのポイント
・マスク、防護服等の備蓄は十分か?調達ルートを確保しているか?
・感染の疑いがある患者の対応は?
・院内2次感染をどう防ぐか?
・職員が感染した場合どうするか?
・職員の家族が感染した場合は?
これ以外にも想定しておくことはたくさんあります。
医療施設の機能が崩壊してしまうと、感染による死亡者が膨れ上がってしまいます。
職員、職員の家族、地域住民を守るためにも、今後はパンデミックBCPの策定は医療機関にとって必須となるでしょう。